日本では、お墓については墓相(ぼそう)として、お墓の向き(方位)などの条件を気にされる方が多いと思います。
伝統風水では、お墓に関する風水を陰宅(いんたく)といいます。
本来、住居の風水よりお墓の風水の方が中華圏では、重要視されてきました。
風水の始まりが、お墓から始まっている事が大きいのですが、それだけではありません。
儒教思想にも原因がありますが(先祖を大切にする)それ以外にも、人々の射幸心にも大きな原因があります。
陰宅風水によって、残された家族が出世したり、お金持ちになったりという陰宅効果を知っているからなのです。
では、日本の墓相と陰宅風水では、どのような点が異なっているのでしょうか?
まず文化風習の上で、大きな違いがあります。
それは火葬と土葬の違いです。
日本は、国土が狭いこともあり現在は、ほとんどが火葬です。
しかし、台湾や香港、中国ではいまだに土葬がメインとなっています。
特に高い地位やお金持ちの家系ほど、土葬で風水を重んじています。
そのような文化風習以外でも、大きく分けると三つの違いがあります。
1)地形を重んじるかどうか
墓相では、近隣の環境についてはかなり詳細に条件があります。
たとえば、樹木の近くは凶であったり、玉砂利を敷き詰めるのは凶であったりなど。
しかし日本の墓相は、その墓地自体の地形的環境について論じることは、ほとんどありません。
陰宅風水は地理風水そのものといえるのですから、当然墓地の地理的条件が大事です。
龍、穴、砂、水という地形(巒頭らんとう)の条件をしっかりと考慮します。
2)方位のとらえ方
墓相では、墓石の向きについては詳しく論じています。
しかし、あくまでも墓石の向きだけです。
亡くなった方の生年月日などは、お墓の向きと一緒に考えられることはありません。
陰宅風水では、お墓に向かってくる大きな山(龍)の方位(来龍らいりゅう)と、墓石の向きを考慮しますし、水の流れ(来水や去水)と墓石の向きを考慮します。
また亡くなった方の生まれ年(仙命せんめい)と墓石の向きを考慮します。
3)日時の吉凶
日本では、日を選ぶため六曜を重視しますが、それだけです。つまり六分の一の確率を重視しているわけです。
葬儀に友引はだめといった具合です。
ところが中華圏では、擇日(たくじつ)といって日時を選ぶには、とても細かい条件で選んでいきます。
基本的には、黄道(おうどう)といって太陽の運行を元にした方法や、月の運行を元にした二十八宿(にじゅうはちしゅく)
干支暦をもちいた神殺法などで選んで行きますが、行事によっても選ぶ事ができる日も変わります。
葬式に良い日と、埋葬に良い日が同じとは限りません。
当然ですが、亡くなった方の生年月日なども、考慮して選びます。
このように、大きな違いを上げただけでも伝統風水によるお墓作り(陰宅)が、より人の死に対して深く考慮されていると言えるでしょう。